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企画に向けて~途中経過 >>
微・BL注意報
2011-10-08 16:32:10  | コメント(1)
 今回、葵様が描いたイラストを元にちょっとした短編を書かせてもらいました。
 ここ一ヶ月以上文章からも遠のいていたので、リハビリにもいいかな? と言う感じです。
 タイトルどおり、ほんのりですがBL内容となってます。初めて書くし、ブログと言うこともあり、成分は弱。
 あっさりと書いてもよかったですが、リハビリもあるので、ある程度文章量は確保しました。
(それでも短いのですが)
 なお、出てくるイラストは葵翔様作であり、使用許可はいただいてることを明記致します。

 このブログは葵様へと捧げるものではありますが、もし興味を持たれたならどうぞ一読下さい。
 モノカキとしても一年半程度の、まだまだ未熟な身ではありますが……

 では、前書きはそろそろ置いといて、どうぞ本文へ。







 

 目まぐるしく人々が行き交う都心。ここでは誰もが操り人形のようだと、彼はよく思っていた。
 狭い土地の中、争うように巨大なビルが建ち並び、多くの人が集まる都市――東京。
 日本の中枢であり、繁栄と共に底なしの物価高騰を続ける場所でもある。
 
 ――カチリ……

 ジジッと音を立て、特注のジッポーから赫炎が揺らめく。
 口に加えたアイスブラストに火を点し、味わうようにゆっくりと吸い込む。

「ふぅ……」

 溜息と共に吐き出された白煙は、揺れを感じさせない、世界でも数台しか存在しない車内で踊り、換気口に吸い込まれていった。
 後部座席にどっしりと座り、構えながら、ドアに備えられた灰皿に先端を落とす。
 見れば既に吸殻は数本と溜まっているが、あまり状況はよくなかった。進んでない、目的地まで先程からまったく進んでいない。
 気づけば自然と彼の苛立ちを表すように革靴の踵が上下し、コツッコツッと主人の感情を代弁したかのような音が響く。
 
「まだ着かないのか?」
「もう暫くは掛かるかと……なにぶん、急な事故でしたので」

 黒いタキシードに白い手袋、洒落た丸眼鏡、白い口髭と後ろに撫で付けられた白髪の老人が己が主人に言葉を発した。
 本当なら発生しない筈の渋滞。それが起きたのは人身事故が原因だ。それは彼も知ることであったが、逸る心を誤魔化すには他にいい案もなかったのも事実。
 このやりとりも、既に3度目となるだろうか。その度に呆れもせず送迎係であり、秘書でもある老人は受け答えを返す。
 普段の成年、後部座席の彼ならこんな真似はしない。齢にして未だ28。巨大なコングロマリットの若き社長である為か、相応の能力、感性、価値観を有していた。
 周りからの評価は冷徹、機械人間、そんなものばかりであり。実際、彼自身冷めた性格でもある。
 
「何時見ても思う」
「何がで御座いましょうか?」
「私の目には、歩いてる人間がすべて歯車に見える」
「歯車で御座いますか……」
「ああ、国を、更に言えば文明をまわす小さな歯車だ」

 そう、歯車。この都市に生きる大半の人間はまるで操り人形だ。都市で生きるのではなく、“都市に生かされている”者達。
 まるでそれが生まれてからの使命であるように、同じ時間に起き、変わらない一日を過ごし、その日を終える。
 まるでマリオネットのようであり、社会と言うバケモノを構成する歯車でもあった。そして自身もまた、大きさは違えど同じ歯車なのだと知っている。
 秘書に答えは返さず、視線をスモークガラスに向ければ、道を埋め尽くさんとする人の群れが見てとれた。
 ざわざわと蠢き、信号の色に合わせ規則正しく動く様は、まるで群体で構成された巨大な生き物のようにも見える。



「どうやら、渋滞も解消されたようですな。これなら、もう間もなくでしょう」

 何が、とは言わない。どうやら人間……いや、歯車観察をしている間にそこそこ時間が経っていたらしい。
 秘書の言葉を聞き、スモークガラスに映った己の表情を見て内心で苦笑を漏らす。
 冷たい人間だと、まるで機械だといわれた自分が“笑み”を浮かべていたのだ。社の者が見ればきっと多いに驚くことだろう。
 煙草を灰皿に押し付け残りを吸わずに捨てると、そのまま口内に強力な煙草専用の消臭剤を放り込む。
 味は悪いが、効果は確かだ。これから向かうのは自分が所有しているビルの一室だと言うのに、まるでこれでは他人の家に行くようだと自身でも思う。
 仕方ない。そう、なんせ――――

「……彼は煙草の臭いが嫌いだからな」
「何かおっしゃりましたかな?」
「いいや、独り言だ。気にするな」

 声量的には聞こえていた筈だ。それでも言外に私《わたくし》は聞いておりませぬ。そう言っている。
 そう言った細かい機微に関しても、この秘書は非常に有能だった。
 流れが良くなり、スムーズに車が道路を進んでいく。このペースなら、本当に後十分と掛からないだろう………




 ――――ピピッ……

 所謂億ションなどと呼ばれる、都心でも一等地に建てられた高層ビルの最上階。その一室のロックが解除された。
 磁器カードによる鍵と、更に4桁の暗証番号、網膜スキャンを通してようやく開いた扉から室内に入り込む。
 本来なら靴のまま上げれるタイプの部屋だが、今この部屋に“住んでいる”者がそれを嫌ったため、暗黙のルールとして、いつの間にか靴は脱ぐ決まりとなっていた。
 ピカピカに磨かれたフローリングが目に眩しい。ハウスキーパーなんて雇っていないし、彼自身も掃除はしていない。
 必然今共に住んでいる者の仕業となる訳だが、随分と綺麗好きなのか、別の理由なのか。床だけではなく、入ったリビングも清潔に保たれている。

 現在の時刻は正午を過ぎて少し。本来なら彼も仕事の最中だが、予定を前倒しにして片付けることで無理やり時間を作った。
 そして奇妙なことだが、この家からは人の気配がした。彼の現在の同居人はまだ二十歳になったばかりだし、現役の大学生でもある。
 彼の記憶に相違がなければ、この時間帯は講義が入ってた筈なのだが……まぁ、居るのを承知で来たのは否定しない。確信もあったのだから。
 洒落たリビングの硝子製のテーブル、その前にあるL字の革張りのソファーに手に持った鞄を置く。
 表面上は恐らく冷たい仮面のままだと認識しつつ、内心は急いて仕方がなかった。
 ジャケットを脱ぐ時間も惜しく、自然と速度をます歩きに任せ、玄関通路にある扉の一つをゆっくりと開ける。
 そこは物の少ない部屋だった。最低限の調度品、生活用具。その中で唯一異彩を放つ大きめのベット。彼が無理に与えたものだ。当時はそう、確か……内心の思いを知られないようにと――――

 「同居者に何も与えない程、私は狭量じゃない」とかなんとか、そんな可愛くないことを言った筈である。

 ある意味では思い出深いベットの白いシーツの上に、“彼”は眠っていた。
 丁度窓際に設置しているためか、暖かな陽射しがベットとその身を照らし出し、その端整な容姿もあいまって完成された絵画のような印象を見る者に与える。
 起こさないようにそっと忍び寄り、その柔らかな髪を撫でる。サラサラとした感触が心地よい。

「……んっ」

 ふとした途端手が滑り、手触りのよい頬に指先が触れてしまう。まるで赤子がむずがるように身じろぎをするが、どうやら起きる気配はない。
 深い眠りなのは、過去数度と繰り返してきた“この行為”で知っていた。軽いスキンシップ程度では目覚めないのも確認済みである。
 髪を撫でていた指先がふと、その湿り気を帯びた唇にそっと添えられる。弾力のある、それでいて柔らかく温かい感触。
 なぞるように指を動かせば溜息にも似た吐息が零れ、彼の指を擽っていく。
 敏感なのだろう。時折零れ落ちる淡い声は艶を含み、相手をその気にさせてしまう。
 気分を変えるように深く息を吸い、名残惜しそうに指を唇から離す。

「これでは一体、どっちが依存してると言えるんだろうな……」

 依存。目の前のベットで眠る姫は、己に依存している。そもそも出会いの切っ掛けはなんであったろうか。
 確か、その整った容姿が災いし、不良に絡まれていたところを気紛れに助けたのが始まりだった筈だ。
 どこにでもあるようで、中々ない出会い。それだけなら、はいさようならで終わっただろう。
 それがどう言う訳か、神の采配か悪魔の計略かは不明だが、度々と偶然再会する機会に恵まれ、話し合いをする程度には仲が深まった頃――それは起こった。

「お願いです。こんな事を頼むのは可笑しいとは分かっています。それでもどうか、俺を助けて下さい!」

 その言葉から始まった奇妙な同居生活。いや、実際のところ、ここは彼にとっては所有している家の一つに過ぎなく、当初は来ることも殆どなかった。
 それが半年目を迎えた今では、仕事を片付けた合間にこうして顔を見に来るほどになっている。
 正直に言って惹かれていた。機械のような人間だと己でも自負していたが、思いのほか人間味にあふれていたらしい。
 知らず苦笑が浮かんでいる事に気づき、更に笑みが深まる。悪くない。今の感情、日常を悪くないと思う程度には、この生活を大事にしている。
 
 そっと背後からベットに乗り、そのまま優しくその自分より幾分華奢な身体を抱き締める。



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 男性にしては随分と甘い体臭が鼻に届き、一瞬頭がくらりとした。それがボディソープやシャンプーの匂いだと理解していても、人が身に纏うだけでこうも変わるのか。
 最近では仕事の合間のこの一時が癒しだ。彼の前では何時も冷徹な素振りを見せているが、そろそろそれも難しいかもしれない。
 なんせ彼は両刀だ。その気になれば何時でもこの両手に抱いた身体を奪える。嫌がるなら、それこそ同居を盾にとればいい……
 
 ――――そう考えたのは、一体何回目だろうか?

 それでも鋼の精神で抑え込み。ギリギリの一線を死守してみせる。欲しいのは身体ではなく心。
 彼は自分がこうしていることを知らないし、それでいいと思っている。知る頃には既に手遅れだからだ。
 このままにするつもりはない。近い将来、目の前の彼を自分から自分の胸に身を任せるよう仕向けて見せる。
 その為の無数の謀略を夢想し、昼の心地よい陽射しに誘われるように暫しの眠りへと旅立った…………


 ~fin~








 どうも、以上となります。もうちょい、何か余韻の残る最後にしようかとも思ったけど、まっいっかな?
 と、こうなりましたw
 イラストはうほっ、いいBL絵! なのに、文章からそんな匂いがしないのはきっと当方がBL系経験値がないから^^;
 さて、ついでにこんなのもUPときます。

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 タチバナ様が現在進めてる企画の背景下書きと言うか、線画というか? の一部です。
 まだまだ描きかけ(色はなんとなくおいただけで、線画自体途中)ですが、来週あたりには完成させて、人物にうつりたいと思ってます。

 ではでは、また次のブログ、あるいはどこかのコメでお会いしましょう!

読みました~!読ませて頂きましたよ~アンデルセン様~~~(;O;)!!!

イラストからストーリーを考えて頂くということで、本当にすっごくワクワクしてました♪
ブログにアップされてるのを発見してドキドキで読み始めたんですけど、なんでか恥ずかしくて読んでは悶え読んでは悶え……(笑)途中で照れ過ぎて、そこらへんの床でジタバタしてました(笑)

そ、そんなことはさておき……。
ど~しよう!!!
私はメッチャ好みでした、この設定も文章も!!!
黒髪さん社長だったんだ~28才なんだ!金髪は大学生なんだ~歳の差だ(≧∀≦*)とかもう萌えてしかたなかったです。←すみません、腐れで低俗な感想で…(~_~;)

それにしても文章の言い回しとか、動作や状況の描写の仕方がすごく上手いなぁ、ってしみじみ思いました。そんなに長くはない文章の中で、しっかりと人物像の説明もされているし。
イラストの人物たちのキャラクターが見えてきて、ドキドキしました。

最後の方のほんのりなBL感がもう、たまらないです!!!私、ガッツリもいいけど、こういう微妙~な感じがすごく好きで……。
ギリギリなのね、微妙なバランスなのね~とハラハラ。最後の社長のプラトニックな感じと、自信家な一面がこれまたグッときました。

これ、読みたい…。最初から最後まで読みたい、とか思いました(笑)

すみません、語りが止らないのでこの辺にしますm(__)m

ドキドキしながらアップしたBLイラストから、こんなに素敵なストーリーを作って下さってありがとうございます(*^ワ^*)
男性のアンデルセンさん、しかも普段BLとか書かれたことない方にこうやってストーリーを作って頂けたなんて……!!!感動&感激です(;O;)
この短編は大事に大事にさせて頂きます!!!
本当にありがとうございました!!!


投稿者:  [ 2011-10-08 20:46:20 ]